いい話

昨年、友人からメールが転送されてきて
その内容が良くって涙しちゃったので覚えておこうと思って残しときます。

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『悲しき中堅(ミドル)』


スポーツでもビジネスでも、強くあり続けるチームは共通している。ほどほどにベテラン、中堅、若手がいて
、連携しながら仕事をしている。そんな組織だ。

この十数年、日本の会社組織の多くは、その人材バランスが大きく歪んでしまった。人員構成をみると50代が
半分以上というのも珍しくなかった。不況のせいで若手の採用をやめた会社も多かった。

そんな歪みのしわ寄せを一身に受けたのが、年齢的には30代から40代、役職では主任、係長、課長代理あたり
の、いわゆる中堅(ミドル)に位置する人たちだ。たくさんいる年長者からは頻繁に指示が降りてくる。サポー
トしてくれる後輩はおらず、仕事はすべて自分でやらなければならない。疲れ果てメンタルになっている同世代
の姿はもう見慣れた光景だ。

最近の景気回復は、仕事にくたびれた中堅にとって、いくぶんは朗報だ。新卒採用は急速に回復している。団
塊の世代を中心に上位の役職者も大量に引退しつつある。

しかしそれでも、中堅の悲哀はこれからも続くだろう。事業の再編・統合や会社の買収が起これば、業務量は
膨大だ。インターネットなど情報技術の向上も、やらなければならない仕事量を飛躍的に増やした。頼むほうは
「とりあえず、やっといて」と、いくらでも頼める。

だいたいIT化で業務が効率化したというのは、どうにも疑わしい。特に中堅の仕事は、少なくとも短期的な効
率では、計れないものがほとんどだ。パソコンだけでは処理仕切れない対人関係や業務の微妙な割り振り、摺り
合わせなど、経験の浅い若手にはどうにも荷が重い。一方で、プロジェクトの段取りや、ときに「危ない」ギリ
ギリの仕事をどうにかやりきれるのは、ベテランよりも実質的には現場で奮闘しているミドルたちだ。

中堅が汗をかく仕事は、どうしても時間がかかる。時をかけて誠意を示し、折り合いをつける。だからこそ、
みつかる落としどころもある。だが、流れる時間は加速を増していく。グローバル化だ。株主への説明責任だ。
スピード経営だ。時間は待ってくれない。

とかく社会は「待つ」ことが苦手になった。コンピュータ処理でも、接客サービスでも、ちょっと待たされた
だけでイライラする。ケータイの普及で「待ちぼうけ」を食うことは減った。だが本当は、仕事だけでなく、恋
愛でも遊びでも、待つことではじめて成就するチャンスも多かったはずだ(「待つ」について、鷲田清一著『「
待つ」ということ』(角川選書)は面白い)。

後輩を育てるにも、成長を待つことが何より大切になる。待てない社会の割を食っているのは、待つことが本
来の仕事である、中堅として働く人たちなのだろう。

そんなミドルに希望はあるのだろうか。社会の怒濤の流れのなかでは、個人の努力にも限界がある。だとすれ
ば、まずは中堅の仕事の価値を、きちんとみんなが認めるべきではないか。ITによりトップとボトムが直接つな
がることで効率化も進み、無駄な中間の仕事は一切いらなくなる。そう本気で信じた経営者もかつていた。だが
現実は逆だ。技術だけでは処理し切れない仕事こそ増えている。

高齢社会や年金問題など、社会のベテランの今後に注目が集まる。学力低下だ、ネットカフェ難民だと、若者
の現状に嘆きの声があがる。そのなかで、中堅として板挟みの仕事に地道な努力を続ける人がいることも忘れな
い。そんな社会にこそ本当の希望があると思うのだが。

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